同じあいつに惚れたなら
「淑女と髯」'31 、「青春の夢いまいづこ」'32 (共に)小津安二郎 (共に、音楽付き) を新文芸坐で。
『淑女と髯』(淑女と髭) は、コメディとしては笑えませんでしたが、周囲から時代遅れと笑われていたヒゲぼーぼーの岡田時彦が、ヒゲを剃るとハンサムになり突然モテだすだけでなく、やっとこさ職も決まるという不況を反映したサクセス的展開も見受けられました。 リンカーンのように女除けのための髯だ、なんて言って。
ライバルの前科者モガ(伊達里子)が、ヒゲぼーぼーの頃から好感を持ってたレディ(川崎弘子)に、うまくいくきっかけを授けるかたちになってしまったり、その彼女に笑顔でサヨナラしてイイ感じになったりするところが好みでした。 最初の方でこのモガはレディからカツアゲしようとしてたところをヒゲ男が助けるというシーンがあって。 わたしは時代劇だと敵のつもりで剣を戦わせようとしてたのに結局酒を酌み交わす仲になる、というのが好きだと昔から言ってるんですが、恋敵の女性でも“同じ男に惚れた同志”としてお互いを尊重するというのは好きなんです。武士の情けみたいな感じもあって。
『青春の夢いまいづこ』 は、学生時代の仲間が社会に出て葛藤を抱くという青春ストーリーで、コチラの方が可笑しいところがちょこまかありました。 主要人物としては、できすぎくん(江川宇礼雄)とのび太(斎藤達雄)がしずかちゃん(田中絹代)を好きで、ジャイアン(大山健二)とスネ夫(笠智衆)とで仲良し4人組って感じの人間構成だなと思いました。しずかちゃんは4人の共同財産だって。
できすぎくんは急死した親父の大会社を若くして継いで、そこにナントカ雇ってもらったのび太たち3人。どうしても社会での立場を思ってぎくしゃくしてしまって、それが最も気に入らないのは社長になってしまったできすぎくんで。
やはり大恐慌時の就職難を反映してるんですが、できすぎくんとのび太の友情ゆえの喧嘩はなんかよかったです。のび太にしっかりと堂々としずかちゃんを守って欲しい、そして2本の木のように対等に成長していきたい、そんな思いが伝わってくるようでした。
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