わたしは御用にはならんぞ
「獣人」'38 ジャン・ルノワール をシネマヴェーラで、 「長恨」'26 「御誂次郎吉格子」'31 伊藤大輔 をフィルムセンターで鑑賞。
『御誂次郎吉格子』(無声)、おもしろかった~。弁士・ピアノ無しの日程で観たんだけど、熱いカメラワークにテンポも良く、目新しい題材じゃないのにお話も楽しい。キャラ的にも“玄人の女”特有の情感と“誰も手をつけていない”少女の薄幸ぶり、悪人たちの転がる如く軽やかな動き、味方さんも御用さんもどちらさんもノリがよくて、もちろん主人公鼠小僧の日本男児らしき長所・短所が軸になり盛り上げる、ユーモラス&人情風味たっぷりの時代劇でした。江戸から上方へというのも自分好みかな。伏見直江って大河内さんとつきあってたのは本で読んだけど、かーなーりー粋な姐さんで素敵。江戸っ子で、新人の山田五十鈴を優しくかくまってくれた珍しい大物女優だそうですが、わたし好みのタイプですね。山岸しづ江を見たときも「なんてイイ女なんだっ!」と思ったけど、直江はんも髪の乱れ方や着物の襟の緩み、仕草や表情で酸いも甘いも表現できるタイプでした。大河内の気がそれる純情な乙女を演じるのは実妹の伏見信子です。それにしても次郎吉の最期に呼ぶ名前には「そっち~!?」と思いました。
その前に『長恨』(無声)て作品の12分の部分上映があって、ちょうど現存してるのが物語のラスト部分らしく、大河内傳次郎独断場のチャンバラでは、御用たちに追い詰められても踏んばる派手なチャンバラを映すカメラが、ロングショットとアップと主人公目線でグルングルン回すやつとが、目まぐるしく楽しめるように出来ていると思いました。彼が逃してやる男女のカップル(彼の弟と、兄弟で惚れてしまうんだけど盲目の弟に心が向いてしまった女)の道中のシーンでは、二人でただ土手や原っぱを歩いたり、立ち止まって兄を思って叫んだりして二人なだれ込むところを派手なチャンバラに挟むうちに、すごく気持ちが伝わってくるような、熱いものが込み上げてくる感じがしました。なので、これらを感じられた後に、流暢な「御誂次郎吉格子」の、最後までフィルムが残されている唯一の無声作品を鑑賞できて、「楽しめた~、よかったな~」と素直に嬉しく思いました。
『獣人』は、機関車の音と汚れと煙がすごくて、労働者たちの妻や母まで鉄道関連の仕事や住まいというのが、人柄が温かいだけに辛く酷な暮らしぶり。 そういえばラストのほうで男が友に正直に打ち明けたとき、それを聞いて友が台詞の後に「わかるよ」と付け加えたのが嬉しかった…。わかるわけないんだけど、普段真面目でソフトな男の言うことだから信じてあげたいのかなって。こんなちょっとした台詞がちらほらあったけど忘れちゃった…。 ジャン・ギャバンとシモーヌ・シモンのロマンスには思いの他ノワール的な香りは弱く、遺伝子(血縁)という似たような悩みを持つ二人が必然的に仲良くなったという自然な恋のムードに感じました。 シモーヌ・シモンの出演作ずっと観たかったのでそこは嬉しい。ザ・フレンチロリータ顔。 あと、持病をかかえて禁酒してる男より、正義感あふれる男の突然の狂気にビビりました。自己コントロールが第一の男より、堂々と生きてる男が安易に殺人を実行したことにビックリ。 併映(「めんどりの肉」)はスケジュールの都合で観なかったです…。 労力を大切に。
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